今回は家づくりにおける「庭」と「植栽」について解説したいと思います。
「家庭」という字は「家」と「庭」と書くように、家づくりにおいても「庭」というのはとても大事なテーマです。しかし、一般に家づくりを考えている方の多くは、まずは「建物」のことが最優先なので「庭」のことは、建物が出来てからの「後回し」と思いがちかもしれません。
当然、ご予算のことなどもあると思いますので、家が完成して実際に住んでからじっくりと庭を整備していくのも構わないのですが、その「計画」だけでも、少なくともどのような「庭」したいのかは、建物の設計と同時に考えてほしいと思います。
建物についてもいろいろな考え方があるように、庭にもいろいろな考え方があります。また、建てる敷地の大きさや形によっても、それは様々だと思います。しかし、ある程度限られた敷地条件の中に、「家」と「庭」を作るわけですから、できるだけ建物の設計を進める際に、それぞれのイメージや配置だけでも決めておくと良いと思います。そうしないと、建物が完成してから庭のことを考えた時に初めて「希望の庭にならない」気づくというようなことが起こったりします。
では、「どのようなことを決めておくべきか」ということですが、まず、以下のことをイメージしておいてください。
①道路から建物へのアプローチ
②駐車場のスペース
③セミパブリックな庭のイメージ
④プライベートな庭のイメージ
まず、①の「道路からの建物へのアプローチ」です。
敷地と道路の高低差や方位、環境などを考えて、敷地の入り口からどうやって家の玄関に繋げるかを計画してほしいです。もちろん、間取りの上で玄関をどこにするかにもつながる話なので、家の設計にも深くかかわるテーマです。
次に、駐車場のスペースについてです。簡単に言えば「何台の車をどう配置するか」ということです。車庫入れのしやすい配置もありますし、それぞれの車をどういう使い方をするのかにも関係してくるので、家族とも相談しながら設計者に伝えてほしいと思います。
もちろん、車を降りて家の玄関までの流れも考慮する必要があります。そのあたりも①のアプローチを踏まえながら計画していきます。そしてアプローチと駐車場スペースの位置の目安が決まれば、次は庭のスペースです。一言で「庭」といっても、その役割によって前述の③と④の種類があります。
これは、他人が位置するパブリック(公共)な部分と、自分の敷地のプライベートな部分との境目のスペースのことです。
その家に暮らす家族の考え方はもちろんですが、前面道路が車や人通りがどのくらいあるか、道路の幅や歩道の状況、などによっても、どのように計画すべきかが決まります。「できるだけ道路から家の中を見られたくない」と考えている方で、前面道路が人通りや車の交通量が激しい場合は、「高めの塀やフェンスできっちり分けるように計画をする」ということになるでしょう。
逆に、「ある程度公共的な場ともつながりを持ちたい」という方や、前面道路もほとんど人通りや交通量もないというケースであれば、「ある程度オープンな形にして、塀やフェンスはつけない」というパターンもあると思います。その場合は、低木の植栽や花壇などを使って自然に違和感なく「仕切り」と「つながり」を同時に感じさせる方法を使うこともあります。
最後に④の自分たちしか使わない「プライベートな庭」についてです。ここはその名の通り、完全なプライベートの自分たちしか使わない「庭」ですので、そこを自分たちがどうやって使いたいかを考える必要があります。
「子供たちが自然に楽しく遊ぶスペースにしたい」ということであれば、一面に芝生を植えるということもあるでしょう。また、「アウトドア的にバーベキューなどを楽しみたい」ということであれば、「ウッドデッキ」などにするという選択肢もあります。他にも「家庭菜園」にしたり、「ドッグラン」にしたり、といろいろな楽しい使い方も生まれると思います。
どこまで詳細に庭を作っておくかは後々でも良いですが、建物を設計する際には、その配置(ゾーニング)だけでも設計者と話し合っておくと、実際に庭造りを関上げる際にスムーズに進みます。そして、「このプライベートな庭」を道路から完全見えなくなるように計画するか、ある程度オープンに計画するか、建物とどう繋げるか、などを考えながら配置すると良いと思います。特に「ウッドデッキ」などは、リビングにうまくつなげるとセカンドリビング的な「アウトドアリビング」として機能しますので、建物の設計に大きく関わってきます。
庭の配置のイメージがある程度決まってきたら、そこに植える「植栽」についても考えておきましょう。植栽は、「庭」ということだけでなく、実は「建物」にも大きな影響を与えます。例えば、「建物の見え方」に関する影響です。
当たり前ですが、建物は、新築時はいくら綺麗な素敵な建物であっても、年月が経つと少しずつ古くなってきます。外壁が汚れたり劣化したりすると、外からの見え方も悪くなってきます。しかし、植栽は逆になります。植えた時は、高さも小さく葉っぱも乏しいので見栄えはしませんが、年月が建つほどにどんどん成長して、その見え方も立派になってきます。シンボルツリーなど、うまく建物とバランスよく植えるととても素敵な見栄えになっていくでしょう。このような特性を生かして、建物と植栽をうまく組み合わせてデザインすることにより、年月を経ても、四季折々の表情を見せながら、いつまでも素敵な佇まいの家になる効果があるのです。
また、「植栽」は家の中の暮らしにも影響を与えます。代表的な例が、南側に「落葉広葉樹」を植えたときのパターンです。
「落葉広葉樹」とは、字のごとく「冬は葉が落ちて広い葉を持つ樹木」です。「サクラ」や「ナラ」「カエデ」「ハナミズキ」などたくさんの樹種があります。これらの樹木は、夏は大きな葉が茂っているので、太陽の光を木陰として遮ります。一方、冬は葉が落ちてしまって枝だけになるので、暖かい日差しが家の中に入ってくるのを邪魔しません。このような樹木を建物の南側に植えることで、自然の力を使って「夏涼しく冬暖かい」家となる効果が生まれるというわけです。
太陽の日差しを調節したり、風通しの良い家にするなどの自然の力を生かした設計手法のことを「パッシブデザイン」と呼びますが、このように植栽を生かすことも「パッシブデザイン」の大事なアイテムの一つになります。ただ、植栽は自然の生き物なので、管理は簡単ではありません。水や肥料を充分に与えないと枯れることもありますし、成長した葉や枝が周辺の迷惑になることもあります。しかし、そのようなことも家に暮らす中での楽しみだと感じてくれる方は是非、家づくりに「緑」を上手に生かしてほしいと思います。
このように、建物と同じように庭にも目的をもって計画すること、植栽を上手に生かして家づくりを考えることは、とても大事なテーマです。
エアサイクルの家は、元来より、自然の力を最大限に生かす工法です。その延長線上にも庭や植栽のあり方をしっかりと考えていくことも需要だと考える工務店が多いと言えます。これらにご興味がありましたら、お気軽にお近くの工務店様までお問い合わせください。