家づくりの計画をスタートする際に、いずれは避けては通れない重要なテーマとして存在するのが「ご予算」の問題です。
多くの方にとって、マイホームは一生に一度の「人生最大の買い物」です。
この大きな買い物に「どのくらいの予算をかければよいのか」というテーマは、簡単には決められない難しいテーマでもあり、ややもすると後回しにしがちな問題でもあります。
しかし難しいテーマであるからこそ、この問題には早めに取り組んだ方が良いと思います。できるだけ早い段階で、この「資金計画」に真面目に取り組むことで、その後の家づくりの計画も回り道をしないでスムーズに進んでいくはずです。
「資金計画」という言葉自体、あまり使わない言葉かもしれませんが、実は、みなさんが通常の買物をする際にも大なり小なり「資金計画」は存在しています。
例えばみなさんが自動車を購入する時、テレビを買い替える時、洋服を新調する時など、「買いたい商品の価格」と「捻出可能な予算」の両方を考慮し、後悔しないようにしっかりと考えながら買い物を行っていると思います。
マイホームでは、金額がとても大きいというだけで、本質な部分はそれらと変わらないのです。まず大事なことは視点を整理するということです。
通常、みなさんが買い物をする際は、次の2種類の視点を交えながら買い物をしていると思います。
① まず買いたい商品を見つけてから、その価格に対して捻出できるかを考える
② 捻出可能な金額(予算)を考えてから、その予算にあった商品を探し検討する
買いたい商品の価格が低い場合、①の視点だけで進めていくケースが多いと思います。しかし、価格が高くなるとだんだんと②の視点が重要になるはずです。
また、現金だけでは購入が難しい場合は、クレジットやローンを利用するケースもあります。その際は、返済についても考慮しながら購入の意思を決定することになります。
これらを整理すると、家づくりのような大きな金額が必要となる買い物の場合は、②の自分たちが捻出可能な金額をしっかりと計画すること、つまり「上手な資金計画」を立てながら家づくりを進めていくことがとても大事になるわけです。
では、「上手な資金計画」とはどのようなものなのかを詳しく解説したいと思います。
高額なマイホームの場合は、ほとんどの方が「住宅ローン」を利用します。
なので、多くの方の場合、住宅購入のご予算は以下のような図式になるのです。
住宅購入資金額 = 自己資金額 + 住宅ローン利用額
「自己資金」には、次の2つの種類があります。
A.「自分たちの貯蓄から捻出できる金額」
B.「親族等からの援助してもらえる金額」
Aについては、自分たちで把握していると思いますので、そこからいくらくらいまでなら家づくりに捻出しても良いかを検討してください。
Bについては、それぞれ事情は異なりますが、可能な方はご両親に相談してみるもの良いと思います。なぜなら、住宅購入の際には特別に「贈与税の控除」があるからです。
一般的には、親から子供への贈与であっても、現金を贈与したら一定の割合で贈与税がかかります。しかし、この制度を使えば決められた金額までは税金が控除されるので、ご利用が可能な方は検討してみるのもアリでしょう。
控除額の上限は契約日や住宅の種類によって異なりますが、ちなみに現在のルールでいうと建築の請負契約が令和2年4月1日~令和3年12月31日までであれば、最大1500万円(一般住宅は1000万)まで控除があることになっています。
このように、「自己資金」については比較的、簡単に算出できると思います。
しかし、問題は「住宅ローンの借入額」です。これについては、金融機関を利用するので自分たちだけでは決められませんし、将来の生活設計なども考慮する必要があります。そう意味では、まずはこの住宅ローンの仕組みを理解することから始めると良いでしょう。
「住宅ローン」の基本的な仕組みを解説します。
「住宅ローン」は次の3つの要素で成り立っています。
① 月々(ボーナス)の支払額
② 返済年数
③ 借入金利
この3つを想定し、そこから逆算すると借入金額の目安が自動的に算出されます。
例1)
・月々の支払い 8万円(ボーナス無し)
・返済期間 35年
・借入金利 1.0%
この条件で逆算をすると、仮に審査に通ったとして、この場合の借入可能額は約2800万 となります。
家づくりにかかる金額を決めてから、住宅ローン借入額を決める方法もありますが、家づくりの費用がまだ不明な初期段階では、まずここから設定した方が安心です。
ここで、みなさんが一番重要視されるのは、「月々の支払額」ではないでしょうか。
ここが、生活にダイレクトにつながる部分ですので、ここをどう設定するかの目安を決めることが大事です。
多分、ベースとなるのは現在支払っている家賃や駐車場代、マイホームのために毎月貯蓄していた金額などになるでしょう。また、住宅ローンには「団体信用生命保険」という保険をつける方も多いので、現在加入している生命保険もこの期間に見直す方もいて、その場合は現在支払っている保険代も考慮にいれることでしょう。
最近は「ファイナンシャルプランナー」という専門家に相談して、将来的なライフプランを立てながら計画していく方も増えているようです。
「借入期間」については、現在の自分たちの年齢から想定されることになります。長期返済の方が月々の返済額が低くなるので、最大の35年返済を検討する方も多いと思います。ただ、年齢によって返済年数の制限がありますので要注意です。一般的には80歳で完済というルールが多いので、例えば40歳の方は35年利用できますが、50歳の方は30年未満の返済期間しか利用できないということになります。
「金利」については、社会情勢によって決まるので我々ではどうしようもありません。ただ、現在は低金利時代ですので、みなさんにとって非常に有利な時期であることは言えるでしょう。
金利の種類は「変動金利」と「固定金利」があります。「変動金利」は「固定金利」と比べて金利が低いのがメリットですが、将来金利が上昇すると支払額も上昇するリスクを考慮しなければいけません。
そういう意味では「固定金利」は金利が変わらないので返済額も上昇せず安心です。しかし、「変動金利」よりもスタート時点での金利が高いというデメリットがあります。
一般の民間金融機関では変動金利が多く、固定金利では公的融資の「フラット35」という長期の35年固定金利の商品が代表的です。
どちらを選ぶかは、みなさんの価値観で選択してください。
いずれにしても、低金利の時に住宅ローンを利用できることは幸せですね。
あと大事なことは「金融機関がどれだけ貸してくれるか」という課題をクリアすることです。
いくら「自分はこれだけ返せる」と言っても、その金融機関の判断によっては「そこまで貸してくれない」というケースもあります。
そこには「審査」というものがあります。皆さんの「年収」や「勤続年数」「勤務先」「他の借入利用額」などを基にして、希望の金額を融資可能かどうかを審査されます。
金融機関ではそれぞれの審査基準がありますので、実際には相談してみてということになります。
これらについては、できるだけ家づくりの初期段階で金融機関に相談することをお勧めします。特に、土地から購入して新築する方は、どんな土地を探すべきかの判断基準にもなりますので、早い段階で金融機関の「仮審査」などを行うと、その後の計画がスムーズに進みます。
「仮審査」は工務店さんがサポートしてくれる会社もありますので、お気軽に相談されると良いでしょう。
この「資金計画」をしっかりと立てることによって、自分たちがご用意できるトータル予算の目安がつけられます。そして気になる工務店さんの建築にかかる金額も聞きながら、自分たちの予算に合う、信頼できる会社を探していくことになると思います。
そこで、気をつけてほしいことがあります。
それは、建築にかかる費用のことです。
よく坪単価だけで判断する方がいらっしゃいますが、これはとても危険です。なぜなら「坪単価○○万円」というのはその会社によって、「どこまで含まれているか」「何を基準にするか」などがバラバラで、トータル費用を勘違いしてしまう可能性があるからです。
例えば、会社によっては「建物にかかる最低限度の費用だけ」を示していることがあります。本来であれば、建物以外にも「付帯工事」や「設計申請料」「外構費用」「エアコン・カーテン・照明」「地盤改良」等々、かなりの金額がかかるのですが、それが坪単価に含まれないケースも多いです。また、坪単価に含まれている仕様や性能のレベルが低い場合、その後の「オプション」の追加でコストがかなり上昇したという話もよく耳にします。
また、坪単価の基準になる「坪数(面積)」も問題です。その面積が、法的に表示される「床面積」ではなく、その会社の独自の基準による「施工面積」というものになっている場合もあります。例えば法的な「床面積」に充当しない「バルコニー」や「小屋裏部分」「吹き抜け」等をどうカウントするのかによって、見かけの「坪単価」が安くなったり高くなったりします。
これらは特に、商品の仕様や規格が決まっている大手ハウスメーカーやローコストメーカーに多いケースなので、そこはしっかりと説明してもらって、現実的にトータルでどのくらいの金額が必要なのかを把握してください。
これら建物費用以外にも、「住宅ローンにかかる経費」「土地購入にかかる経費」「税金」「登記費用」「引っ越し仮住まい」「解体費用」なども現実には必要となりますので、それらの全てをある程度想定しながら全体の資金計画を考えることが大切です。
これらのように、「自分たちが捻出できる資金の計画」をしっかりと立てて、同時に「建築の際に必要となるすべての費用」をその仕様や性能と比較しつつしっかりと自分たちが把握することで、最終的に信頼できる住宅会社が選択できるのではないでしょうか。